大判例

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東京高等裁判所 昭和48年(ネ)2453号 判決

一 控訴人が昭和四八年五月六日その存続期間の満了するまで本件実用新案権を有したこと、本件考案は、耕耘機に連結するトレラーの駆動装置であつて、原判決添付の実用新案公報図面において、(A)耕耘機Aのミツシヨンの一部より動力を取り出し、耕耘機架台3の後方に延長伝動するようにし、(B)一方、トレラーB側は、リヤーシヤフトより架台8の前方のヒツチ金具12付近に至る動力伝動装置を設け、(C)その双方の動力結合点17を、耕耘機AとトレラーBとを結合する結合ピン13の軸心線上C―Cに設けるという三つの構成を要件としていること、並びに被控訴人らが、少くとも昭和四三年一二月一日から昭和四八年五月六日に至るまでの間に、それぞれイ号物件を製造販売したことは当事者間に争いがない。

二 そこで、イ号物件の構成が本件考案の技術的範囲に属するか否かについて検討する。

原判決添付の第一ないし第五図面およびその説明によると、イ号物件は、耕耘機に連結するトレラーの駆動装置であつて、次のような構成を要件としていることが認められる。

(A)´ 耕耘機Aのミツシヨン5よりVベルト16による伝動方法をもつて、トレラーBの前端上部に設けた上部ギヤボツクス25に軸支した上部傘歯車18と同軸のブーリー14に動力を伝動するようにし、

(B)´ トレラーBのリヤシヤフト28へ連動連結したプロペラシヤフト15の前端がトレラーBの架台8の前端附近に固定した下部ギヤボツクス12内に至る伝動装置を設け(但し、被控訴人トーハタ株式会社の製品では、プロぺラシヤフト15のケースの前部に下部ギヤボツクス12が固定され、架台8の前部は垂直軸筒26に回動自在に遊嵌され、また、同株式会社野沢製作所の製品では、上部ギヤボツクス25の下部が垂直軸筒26となつている。)、

(C)´ 上部ギヤボツクス25内の上部傘歯車18とプロペラシヤフト15の先端に設けた下部傘歯車21とにそれぞれ噛合する上部傘歯車19と下部傘歯車20とを、下部ギヤボツクス12上に回動可能に配置した垂直軸筒26を上下に貫通して軸支させた垂直伝動軸17の上端と下端(但し、被控訴人株式会社野沢製作所の製品では、上端と途中)とに取り付け、下部ギヤボツクス12の下部にある旋回支体13によつて、下部ギヤボツクス12の下面を回動自在に支持させ、トレラーBの前端で垂直軸筒26と支持腕11に固定されたトレラーB側の取付金具22を、耕耘機Aの架台3の後部に固定された耕耘機A側の取付金具23に嵌装させ、取付金員22と同23とを着脱ピン24によつて左右に屈折の作動をしないように連結し、押えボルト27で固定し、(但し、被控訴人株式会社野沢製作所の製品では、押えボルトの代りに、二本の着脱ピン24、24によつて取付金具22、同23を左右に屈折の作動をしないように連結固定している)、そして、耕耘機AとトレラーBとの連結分離は、取付金具22、同23と着脱ピン24の部分において、着脱ピン24の挿入離脱によつて行うものである。

したがつて、イ号物件は着脱ピン24によつて耕耘機能を備えた前方部分と積載運搬機能を備えた後方部分とが結合分離されるものというべきであるが、これを分離された状態でみると、取付金具23を含むその前方部分は耕耘機と呼称されるものであり、他方、取付金具22を固定した支持腕11、上部ギヤボツクス25、垂直軸筒26、下部ギヤボツクス12、旋回支体13、垂直伝動軸17、傘歯車18、19、20、21の機体からなる部分は、その後方部分と物理的に一体をなしていて、もとより耕耘機能とは関わりがなく、むしろ、積載運搬機能を備えた後方部分とともにこれらをトレラー部分と呼称して妨げないものであること、また、「結合ピン」とは物体と物体とを結合する棒状のものを指すことが明らかであるから、本件考案において耕耘機AとトレラーBとを結合する「結合ピン13」はイ号物件における着脱ピン24に相当するものというべきである。

控訴人は、イ号物件における旋回支体13、垂直伝動軸17が本件考案の結合ピン13に相当する旨を主張するが、イ号物件の前掲構成によれば、旋回支体13および垂直伝動軸17は、支持腕11、垂直軸筒26、上部ギヤボツクス25からなるトレラーの一部分と、下部ギヤボツクス12およびそれに連なる後方部分からなるトレラーの他の部分とを結合するものであつて、耕耘機とトレラーとを結合する要素ではないことが明らかであるから、控訴人の右主張は採用するに由がない。

ところで、本件考案の(C)の構成においては耕耘機とトレラーとを結合する結合ピンの軸心線上に双方の動力結合点が設けられているが、これに対し、イ号物件の(C)´の構成においては、双方の動力結合点が右結合ピンに相当する着脱ピン24の軸心線上には設けられていないから、イ号物件は、本件考案の右構成要件を具備しないものといわざるをえない。

加えて、成立に争いのない甲第二号証(本件考案の実用新案公報)と原判決添付第一ないし第五図面およびその説明とを対照すると、本件考案において、結合ピン13は、耕耘機とトレラーを結合する要素であるとともに、その軸心線が左右屈折の中心となるものであり、動力結合点17は、耕耘機のミツシヨン5の一部から取り出され、その架台3の後方に延長伝動されるべき動力を、トレラー側のリヤシヤフトからその架台8前方のヒツチ金具12附近に至る伝動装置に伝達する点(部位としての)であるとともに、これを中心にトレラー側の伝動装置に伝達される動力の方向が左右に旋回し得るものであり、そのような動力結合点17を結合ピン13の軸心線上C―Cに設ける構成によつて、「走行するとき旋回の場合は結合ピン13を支点として耕耘機とトレラーは左右屈折することができるが、耕耘機よりトレラーヘの動力伝動装置も、結合ピンの軸心C―C線上に結合点17が設けられているから、旋回時においても支障なくリヤーシヤフトヘ動力を伝動することができる」という作用効果があること、これに対して、イ号物件においては、耕耘機とトレラーとを結合する要素すなわち着脱ピン24の位置と、左右屈曲の中心および動力結合点すなわち垂直伝動軸17、旋回支体13の軸心の位置とを隔離した構成により、結合要素と屈曲中心および動力結合点を形成する要素については、それぞれ独自の目的のため強度上、機構上最も適切な設計をすることができるという効果があることが認められるから、両者はそもそも技術的思想を異にするものというべきである。

以上の次第で、イ号物件の構成は、本件考案の(C)の構成要件を充足しないから、それだけですでに本件考案の技術的範囲には属しないものというべきであつて、イ号物件の製造販売が本件実用新案権を侵害するものであることを前提とする控訴人の損害賠償請求は、その余の判断をするまでもなく、理由がないことに帰着する。

三 よつて、控訴人の本訴請求のうち、原審における請求を右と同趣旨の判断のもとに棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がなく、また、控訴人の当審において拡張した請求も理由がないから、いずれもこれを棄却する。

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